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今回は、医薬品産業とマーケティングの関係について考えてみたいと思います。
バブル崩壊後から長く続く経済の停滞は、医薬品市場にも大きな影響を与えています。具体的な影響については割愛しますが、現実に日本経済の低迷と連動し、医薬品市場の成長が抑制されています。製薬産業は、将来有望とされるヘルスケア産業の中心的産業の一つであるにもかかわらず、です。
もちろん伸びている会社もありましたが、業界として90年代を振り返ると、年率1〜2%の低成長を経験しました。この低成長の時代にマーケティングという言葉が頻繁に聞かれるようになります。
医薬品産業以外の産業はどうでしょうか。バブル後の経済低迷から、成長機会をもとめ、さまざまな経営の概念が実践されました。CS(顧客満足)、CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)、BPR(事業再構築)、キャッシュフロー、IT、CALS、EC(電子商取引)?など、実に多くのキーワードが流行りました。しかし、このような概念がどれほど経営にインパクトを与えたかどうかはわかりませんが、多くの経営トップは社員(あるいは会社)に一貫して2つのことを求めてきたようです。一つ技術力です。そして、もう一つがマーケティング力でした。
早速「マーケティング力」という言葉でてきましたが、どのように理解した良いでしょうか。少し乱暴ですがこの場合、「顧客のことを知る力」と言い換えてもいいでしょう。詳細は省きますが、90年代、多くの産業は顧客についてよく理解できないという状況にあったといえます。
医薬品産業も同時代、マーケティングという言葉がよく聞かれるようになりましたが、必ずしも好意的に受け止められていたとは思いません。医薬品業界に長くいると、自分の業界を特殊なものとして見る傾向が強く、マーケティングというビジネスにおいて極めて本質的な概念ですら、どのような役に立つのか、疑問視される場合も多かったと思います。ですから、マーケティングに拒否反応を示した人にとっては、「そもそも医薬品産業にマーケティングはあるのか」、とか、「マーケティングが機能しているのであれば、現状のような市場低迷などあり得るわけがない」、と主張するでしょう。
しかし、そのような議論はかなりズレていると言えます。なぜなら、製薬会社は民間企業です。製薬会社、顧客に対して具体的な価値を提供し、その見返りに収益を得ています。実は、「企業と顧客が互いの満足度を高めるために、具体的な交換を行う」ことこそが、マーケティングの本質部分なのです。
医薬品は患者や医療現場にとって決して欠くことのできない公共性の高い財ですが、患者は医薬品に何らかの価値を認めています。その価値を創造、提供している製薬会社には、当然のことながら報酬を受け取る権利があります。交換のプロセス、そして交換そのものがマーケティングなのです。
結論を申し上げますと、医薬品産業にもマーケティングはあります。そして、MRもマーケティング活動を行っています。マーケティングという言葉を知らずとも、多くのMRは既にMR活動を通じてマーケティングを実践しているのです。
次回は、少し学問的になりますが、さらにマーケティングの本質に迫ってみましょう。
産能短期大学専任講師 内藤英俊
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