第6回 セールスとマーケティング
 今までの講義から、単純にマーケティングはセールスと同じではないと思われた方もいると思います。確かに、以前のセールスのあり方はマーケティングと大きく異なっていたと思います。しかし、最近はセールスの機能や役割が大きく変化してきています。もはや体力勝負のセールスは必要とされていません。上司に言われた通りにしか行動できないようであれば、MRは務まらなくなってきました。仮にMRがセールスだとしても、セールスは顧客との関係にもう一歩踏みこみ、頭をつかった活動が期待されるようになりました。つまり、体力ではなく知力です。みなさんも社内で、顧客満足(CS)とか顧客関係性という言葉を聞くことがあると思います。これは、マーケティングです。MRもセールスからマーケターの時代に入ったといえましょう。
 ところが、MRの活動スタンスが少しズレると、すぐにセールスに逆戻りすることも多々あります。それはどのような時かというと、MRが商品である医薬品をモノとして、医療機関や医師などの顧客に紹介するときです。理由はともかく、上司と決めた目標を達成するために、この月にこのくらいの量の医薬品を処方させたい。そのような気持ちだけで顧客に接するならば、必然的により多くの顧客を回り、一つ一つの取引きの成功に向け粘り強く交渉することが重要となるでしょう。当然体力勝負です。
 MRと医師との関係がモノの売買だけで成立するというのは単純すぎると思うかもしれませんが、かつてこのような関係はとても安定的でした。特に、患者の数が多く、薬の需要が旺盛なときは、売り手も買い手も詳しい薬の特性や患者ニーズを理解することよりも、確実なモノの取引きが大切でした。また、旺盛な需要が落ち着き始めても、薬をたくさん使うことで医療機関は薬価差を得ることができました。顧客の方から医薬品を欲したので、製薬会社に頭を使うMRは必要なかったと言えます。もはやこのような時代ではありませんが、モノの取引だけにとらわれると、MRもセールスになってしまいます。
 マーケターとしてのMRは、モノの取引は結果として考え、医薬品が処方される背景、つまり、医療機関や患者のニーズなどを深く考えることが仕事になります。「ニーズを深く考える」を別の表現にするならば、「顧客がその医薬品を使う理由を考える」ということになります。そして顧客から集められた理由を整理していくと、医薬品がもっている価値が明確になってきます。つまり、医薬品が処方されることによって製薬会社が顧客に提供している価値が見えてくる、ということになります。
 マーケティングの定義の最初に「マーケティングとは、価値を創造し、提供し、(省略)」とあるように、モノ(やサービス)を提供するのではマーケティングではありません。マーケティングでは価値を提供するのです。MRがモノを提供するならば、体さえあれば十分です。価値を提供しようとするので、頭を使うのです。
 医薬品業界における価値のとらえ方については次回考えてみましょう。

産能短期大学専任講師 内藤英俊
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