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今までの話から、マーケティングには「価値創造」という考え方が含まれていることがおわかりいただけたと思います。また、「価値創造」には企業の様々な組織がかかわりますが、その中にはMRのような顧客と直に接する部門も含まれることが確認できたと思います。それでは、この「価値創造」に顧客は参加できないのでしょうか。今回は、「価値創造」に向けた企業と顧客(市場)のダイナミックな関係を考えて見たいと思います。
皆さんが消費者だとしたら、どのような形で企業の「価値創造」に参加しているのでしょうか。わかりやすい例は、オーダーメイドのモノやサービスです。このような分野では消費者の考えや具体的な協力があってはじめて商品が生まれます。
オーダーメイドのモノの例としてスーツがあります。この場合、消費者は色、柄などの生地選びからはじまり、ボタン、ポケット、ステッチなど細かなスタイルを決めていく必要があります。作るのはもちろん業者ですが、消費者には大企業でいうところの研究開発、商品企画などの機能が委ねられているとも言えます。
次にサービスですが、基本的には全てのサービスはオーダーメードとして考えていいでしょう。詳細は省きますが、具体的に形として見ることができない(無形性)という、サービスの商品特性がその理由です。(オーダーメードの)サービスの例としてヘアカットについて考えてみます。何気なく髪の毛を切ってもらうことが多いと思いますが、客は理容師あるいは美容師に様々な協力をしなければ、ヘアカットというサービスが生まれることはありません。髪の毛を切るとき、髪の毛を洗うときなど、客は彼らがヘアカットをしやすいように自分の体や頭の位置を変えます。また、最も重要なヘアデザインについては、アドバイスを参考にしながら客が自分で決めるのが普通でしょう。全体的なデザインだけではなく、耳、首、目などに髪がどの程度かかっているかなど、細かな部分も客次第です。ヘアカットでは客が商品のコンセプトを考え、サービスの実施では客自身が主体的に参加している様子を理解できると思います。
このようなオーダーメードのモノやサービスでは、客の関与なければ商品として何ら価値が生まれません。これほどまでではありませんが、大衆をターゲットにした消費財でも顧客の参画が見られます。大衆向け商品はどうしても、一人一人の声が企業にまで届かないのは確かで、また、オーダーメイドとは違い、商品を生み出す早い段階から企業と顧客が協力するのは難しいかもしれません。それでも、消費者はアンケート用紙やインターネット、あるいは小売店を通して、製品に対するクレームや要望を企業に伝えることができます。一部の人に限定されますが、商品モニターになったり、サンプル品を試したり、あるいは、店頭での調査に協力するなどの方法で、消費者は企業に商品に関するフィードバックを与えることができます。
実は、企業にとってこのような顧客からのフィードバックは以前と比べものにならないくらい重要になっています。理由は3つほどあると考えられます。まず最初に、最近の顧客は移り気が早くなっていること、次に顧客の商品を選択する目が肥えてきていること、最後に企業に技術優位性が見られず、企業間の競争が厳しくなっていること、です。このようなことを背景に、企業は今まで以上に顧客に近づき、顧客のライフスタイルを知り、より細かく顧客のニーズに応えたいと考えるようになってきました。
企業は、顧客との直接、間接的な連携から蓄積された市場データを、商品改良あるいは新商品開発に結びつけていきます。食料品であれば味が重要ですが、それとともに、容量を小口にしたり、外箱を開きやすいようなパッケージにしたり、中身が壊れないようしたり、すぐに調理できるように前処理がほどこされたり、など、いろいろな改良を施すことができます。働く主婦をターゲットにした場合、パッケージだけでも相当の改良(と新製品開発)が可能になってくると思いますが、働く主婦自身が自分のライフスタイルの中でどのような「食」に価値があるかを認識する必要があるでしょう。このような価値は、企業からの提案だけでは不十分ですし、また、消費者自身だけでも明確になるとは思えません。消費者と企業との相互作用、つまり連携が必要となるはずです。
大衆向け消費財の別の例として、デジカメをあげます。最近は、携帯性や望遠機能が強化されたもの、MP3が付属したもの、耐久性や防水加工(さらに水中撮影キット)が強化されたもの、動画機能や録音機能も付加されています。その中で、若い女性なら、凝った機能より携帯性やデザイン、カラーに配慮されたデジカメが欲しいはずです。若い女性自身も、はじめは自分たちがユーザーとなることを考えていなかったかもしれません。しかし、使い方に慣れ、自分にとっての「価値」が明らかになり、また企業も新たな商品コンセプトの提案を行うなかで、若い女性にとって「価値」のある商品が生まれるはずです。
このように、企業と顧客の「価値創造」に向けた協力関係や連携は、オーダーメードのモノやサービスに限りません。大衆向け製品においても必要です。そして、企業からすると、このような市場との積極的な関わり合いは、商品開発の過程における単なる商品改良だけを意味するのではありません。商品コンセプトを含むマーケティング全体の実施プランが試されることを意味します。商品のコンセプトは間違っていなかったか、商品の販売対象(ターゲット)は正しかったか、価格は適正か、意図した商品コンセプトは伝わったか、販売ルートは機能したか、などの視点で評価されます。
現代のビジネスでは、顧客との接点で大きな価値が生み出される傾向にあります。そして、企業と顧客がどれだけ緊密な協力関係が築けたかがマーケティングの成否を左右するようになってきています。
次回はこのような考えを医薬品産業に応用してみましょう。
産能短期大学専任講師 内藤英俊
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