 |
医者に良い薬ですと説明しても、なかなか使ってもらえない、試してもらえない。なぜでしょうか。いろいろな理由があると思います。具体的な解説は省きますが、次のような理由に整理できると思います。医療機関の経営上のメリット、新薬の評価コスト、治療法変更のコスト、などです。
患者の立ち場で医薬品の特徴を考えると、別の考え方がもえてきます。疾患の重症度によって薬に対する期待値は変動しますが、医薬品は一般的に積極的に消費されるモノではありません。つまり、多く消費すればそれだけ満足度が高まるとは限りません。実は、医薬品を経済学的に定義すると否定財になり、これはなるべく消費を押さえたいとする財を意味します。
普通、商品(モノやサービス)を経済用語で財と言います。英語ではGoodsと翻訳されます。文字通り、財は「良いもの」です。なぜ良いかというと、消費しないより消費した方が、それも多ければ多いほど消費者の満足度(経済学的には「効用」)が高まるからです。例えば、衣服。スーツは一着より二着が良い。ネクタイも一本より二本、三本、多ければ多いほど良いと考えますし、消費者の満足度も高くなります。車や家電、オーディオ機器のような耐久消費財はさすがに衣服のように多いほどよいとは限りませんが、それでも、持っていなければ、欲しいでしょうし、余裕があるならば、一つではなく、二つ、三つと持ちたいでしょう。
医薬品はどうでしょう。Goodsだと思いますか。例えば、薬をたくさん欲しがるとすれば、それはどのような人でしょうか。もちろん病気の人です。たくさん欲しがるなら、重病かもしれません。別の見方をすると、健康の人は決して医薬品を欲しがりません。死に直面しているならば別でしょうが、たとえ病気になったとしても、なるべくならあまり薬に頼りたいとは思わないでしょう。普通、健康な人が病気でもないのに「飲まないより飲んだ方が良い」とは考えないし、「飲むなら多い方が良い」とは決して思いません。消費者(患者)が医薬品を消極的にしか欲しないという側面、このことが医薬品を否定財と定義させているのです。
医者はなぜ薬を使ってくれないのか、試してくれないのか、医療機関としての理由はたくさんあるでしょう。しかし、消費者(患者)の立場で医薬品を考えてみてください。医薬品はそもそも否定財なのです。なるべくなら、飲みたくない。そのような特性をもった商品であることを理解しておきましょう。
一般市民に健康に対する知識が普及すると、医薬品はますます否定される可能性もあります。薬を飲むくらいなら、節制したり、運動したりする方が良いと考える人は増えています。そのような健康意識の高まりを反映し、健康食品、健康機器の市場は拡大しています。医者(と薬)に頼る前に、自分の健康は自分で守るという意識が高まっているからです。将来的には、米国のように様々な医薬代替品が販売されるようになるのでしょう。
産能短期大学専任講師 内藤英俊
|
|
 |