一. 給付制限の規定
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日々患者さんと接していると、実にさまざまな場面に出会うことが多い。窓口担当者としては、そのつど対応に苦慮しながらも処理していかなければならない。そのためにも、保険各法を熟知する必要があることを痛感する。先日も警察署に留置されている留置人が急病とのことで来院。医療機関側は健康保険法第六二条の規定により診療費を国に対し請求しようとしたところ、警察署から「この留置人はまだ刑が確定していないので留置人本人の保険で請求してほしい。」との申し出があった。この場合の取り扱いとしてはどうすればよいのだろうか。
健康保険法第六二条[給付制限に関する規定]
被保険者又ハ被保険者タリシ者ノ下記ノ各号ニ該当スル場合ニ於テハ疾病、負傷又ハ分娩ニ関シ其ノ期間ニ係ル保険給付ハ之ヲ為サズ
(一) 少年院其ノ他此レニ準ズベキモノニ入院セシメタルトキ
(二) 監獄、留置場又ハ労役場ニ拘禁又ハ留置セラセタルトキ
(2)他ノ法令ノ規定ニ依リ国又ハ公共団体ノ負担ニ於テ療養ノ支給又ハ療養アリタルトキハ其ノ限度ニ於テ療養ノ給付又ハ特定療養費ノ支給ヲ為サズ(3)、(4)略
この条文の規定によると、少年院に入院させられた場合や監獄に拘禁された場合においては健康保険による給付を行わないということになっている。しかも、留置の場合、刑の確定・未確定を法では問うてはいない。単に「留置セラレタルトキ」ということになっている。
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二. 代用監獄
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条文の規定からすると、「刑の確定前」であろうが「刑の確定後」であろうが、留置されていること自体ですでに保険給付を為さずということになる。ここでもう少し法を詳解すると、まず「監獄」や「留置場」とはどういう意味かということになるが、監獄については監獄法第一条の第一項で規定しており、刑罰が確定した被告人が拘束される場所、すなわち刑務所と呼ばれている。また、刑事被告人や被疑者(逮捕勾留されたが、まだ起訴されていない人)すなわち未決の人が拘束される場所を拘置所という。さらに監獄法第一条の第三項をみてみると、代用監獄について規定している。すなわち警察に付属する留置場を監獄として代用することを認めている。これは拘置所の収容能力が足りないため、警察署の施設が拘置所の代用をしていることを意味している。警察署の留置場が拘置所の代用として使用されていることは刑事事件の被疑者や被告人の人権を守る意味からすると問題はあるが、健康保険法第六二条第一項の解釈からして監獄法の拘置所=留置場と解釈できる。このことから、刑の確定・未確定に係わらず保険給付はできないことになる。したがって、上記事例の場合については留置場に留置されているということだけで、健康保険法第六二条の対象となり保険請求はできないこととなる。ただし、留置という場合においても、泥酔のために警察署に保護された場合は本人を保護するために留置するものであるから、この場合は該当しない。「窓口は法律の宝庫」という方もおり、実にさまざまな問題を提供してくれる。故におもしろくもあり、息を抜く暇もないくらい真剣に対応を迫られる部署でもある。一つひとつ経験を積みながら日頃からの研究を怠ることのないように研鑚することである。
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詐欺罪
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(1)詐欺罪の成立
他人の保険証で受診した患者さんに問い正すと、ほとんどの方が、ただ、その場を本人になりすまして済めばいいという程度の感覚であり、症状も自己診断で比較的軽症と思われる場合が多い。しかし、症状の軽重に関係なくこれはれっきとした犯罪であることに代わりなく本人たちの自覚を促す事が必要と思われる。法的にはその人について刑法第二四六条の詐欺罪が成立し、一〇年以下の懲役に罰せられることになる。また、悪用されると知りながら他人に保険証を貸与した者についても、持っている保険証を不正使用して本人に実行せしめるような決意を生ぜしめた場合には、教唆犯(刑法第六一条)となり、また不正使用することを知りながらもその行為の実現を容易ならしめた場合は幇助罪(刑法第六二条)に問われることになる。
(2)窓口対応
保険証の本人になりすまして受診するケースは、いろいろな事情で発生するが、窓口担当者としても保険証に顔写真が添付されているわけでもなく性別、年齢、年恰好、態度等からしか判断できない状況にある。この点においては窓口で発見することのほうが難しいものと考えられる。それよりも不正使用による罪の意識が非常に薄いところに問題がある。またこのような不正な使い方をすれば刑法で罰せられるということを保険証交付の際保険者がしっかり被保険者に説明すべきものと思われる。もちろん保険証の注意事項にも記載されているが保険者の被保険者教育のいたらない点があることも否めない。さて、不正使用が発覚した場合だが、本来なら刑罰の対象となることから警察へ通報するとともに療養担当規則第一〇条(通知)第四項に規定されているように保険者に通知しなければならないとされている。悪質な患者に対しては法に則っての対応をすることになる。反省の念が伺える患者に対しては刑罰の対象となる行為であることを説明し、今後二度と行うことのないよう、また不正はいつか必ず暴かれるということを徹底して説明し不正使用における治療費を全額負担してもらうことになる。当然、保険請求のほうもこれからの分については患者負担となるし、すでに請求済みであればレセプト返戻依頼し全額患者負担とすることになる。ただし、レセプト返戻依頼しないで保険者に事の成り行きを説明し、保険者給付分についてを保険者に依頼することも可能である。この取扱いについては、昭和三〇年二月一日、保発第九号で通知されているので参考とされたい。
療養の給付費の返還措置について(昭和三〇年二月一日保発第九号)
診療報酬明細書の調査に伴い、療養の給付費(家族療養費を含む。以下同じ。)の返還措置を要する場合がしばしば生ずるものと思われるが、この場合においては、その返還理由が、被保険者又は保険医若しくは保険者等のうち、いずれの責に帰すものであるかを明らかにすることが必要であるので、特に下記事項に留意のうえ、その取扱いに遺憾なきを期せられたい。
記
被保険者証を他人に使用せしめたこと又は事実を偽って被保険者の資格を取得したこと若しくは給付期間満了を保険医が認知できなかったため同一傷病につき法定給付期間を超え療養の給付を受けたこと等療養の給付費用を返還せしむべき理由が被保険者の責に帰する場合であって、保険医がこれを認知し得なかった場合においては、その旨並びに金額等を当該被保険者に通知し直接被保険者から当該療養の給付費を返還させるものとすること。以下、省略
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