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「Y君、もう君はここへ薬のPRに来なくていいよ」

さっき、ディテーリングが終わった後に、比較的親しいと思っていたS医院S院長に言われた。いつもと同じようにドクターの好きな話題の釣りの話をして、その後に自社の薬の処方をお願いしただけなのに。

「いつもと変わりがないのになぜ?」

クリニックを後にしてから、ずっと自問自答しているが答えが見つからない。なんか悪いことを言ったかな?

「先生の機嫌が悪かっただけかな?」
「いやいや、釣りを止めたのかな?」
「PRの仕方が悪かったのかな?」

自分の話したこと、先生の表情や反応、なにか気づたことはないか?
頭をフル回転して何かを見つけようとするが見つからない。

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どうしてもわからないので、翌日、診療時間が終わる頃に怒られるのを覚悟で、S院長に会いに行った。受付で名刺を渡したら、受付の女性が「はい、かしこまりました」と先生に取り次いでくれた。

「Yさん、診察室へどうぞ」

どきどきしながら、診察室をノックした。「どうぞ!」といつものS先生の声が響く。S先生を恐る恐る見るとかすかに微笑んでいた。

「S先生、昨日、来なくて良いと言われましたが、どうも納得がいかなくて、突然ですが、怒られるのを覚悟でその理由を聞こうと思って来たんです。」

「Y君、悪かったね。実はね、MRの方の訪問があまりにも無駄な時間だと思ってね、大幅に削減しようと思って、今、荒療治をしているんだ。だって、Yくんもそうだけど、ノーアポイントで来て、ほとんど自社の薬の話をして帰るでしょ。うちにはそういう人が一日に十人以上来るんだよ。その時間、1日1時間として勤務200日で200時間。8日間ぐらいを無駄に消費しているんだよ。僕はね、もう人生の半分を越えている。だから、出来るだけ無駄な時間を過ごしたくない。」

「言われてみれば、そうですね。もし私がS先生の立場なら、私のようなMRがたくさん来たら今までの先生のように温厚にできないですね。極端なことをいえば、メールで済むようなことを話に来ているだけですから」

S先生の目がきらりと光る。
「Y君、そこだよ。それをほとんどのMRが分かっていないから、もう来なくて良いよとほとんど全員に言っているんだよ、一部の人を除いてね」

「一部の人ってどんな人なのですか?」

「時間泥棒的なMR活動をしているMRの中で、食い下がって訪問し、聞いてきたのはY君が初めてなので、ヒントをあげよう。そのヒントが分かって答えが合ったらその一部の人になれるかもね」

「そのヒントはこの中にあるんだよ。」

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