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先日のMBA交流会知恵の輪クラブにおいて夏山栄敏氏のご講演を聞いて、今回のブログを書いてみました。

製薬企業研修の常識としてあるのは、入社して3~4か月の缶詰研修。ホテルを貸し切り、学校のように朝から晩まで疾患やMRの基礎知識、自社製品についての研修を朝から晩まで行います。

その間、ホテル代も無料、3食ついて、給与も賞与も普通に出ます。

他の業界を見ても、これだけ厚遇される新人達はいないと思います。そして現場に配属され、その後、OJTを行いますが、途中で追加の研修もあります。また、配属された営業所では継続研修として決められた時間、年間100時間程度の研修があります。

こういう恵まれた環境と慣習があるためにMRは「自分達は十分勉強している」という間違った認識を持ってしまいます。社会人になった後に、自助努力やポケットマネーで勉強しようという気がまったくなくなってしまうのです。(これが後々、他業種に比べて応用力のなさに結び付いてしまう大きな問題となります。ヘッドハンターと話をするとこの問題についてよく話してくれます。)

これらの勉強はあくまでも医療機関に訪問する前の基礎情報の習得です。知っていてしかるべきことを確認する時間としての勉強で、医療機関に訪問するにあたり、恥ずかしくない程度の知識を身につけることが目的です。

そこから、専門職の方々に深く入っていくためには一層の努力が必要になります。

しかし、製薬企業の研修の現場を見てみると、研修期間中に眠っている人も多いし、研修時間を仕事として取っているにも関わらず、まったく実のある学びになっていないケースが多いのが現状です。

また、集合研修といって、支店や本社に集まる研修もありますが、たいてい、前の晩に飲みに行ったりして、翌日の研修ではぐったりしていたり、ひどい場合は二日酔いで参加して、全く研修の意味をなさないものも多く見受けられます。


Multiethnic businesspeople sleeping during a seminar in conference room




こういう現場を見ると「それって本当に集まる必要のある研修なんですか?」と言いたくなるようなものです。きっと効果も薄いのであろうなと感じます。

今後、こういう昔からの流れや慣習で効果もないのに漫然を行われていたことは、「もうやめましょうよ」という風潮になると感じています。なぜなら、研修も大きなコストがかかっているからです。

わざわざ飲みニケーションのために数千万~数億かけてMRを集めるなら、本当に役立つ研修内容を作ったり、効果の出る仕組みを作ったり、また成果を上げる人にフィードバックしてあげる方がはるかに効果的です。

研修において、かけた費用に対しての費用対効果を上げるのは難しいと言われていますが、私はそんな難しいものだと思っていません。そのために事前の準備段階が大事だと思っており、もし研修をやるなら、下記のような取り決めは最低限度しないといけないと思います。

1) 研修前日は就寝12時までに行う。飲まない。
2) 研修当日はどれくらいの人が居眠りしたのかをカウントする。
3) アンケートを取って、眠くなった講義について掘り下げる(教材や教え方も改善)。
4) 昼食は野菜中心の血糖値を上げないお弁当とお茶。
5) 午後は眠くなりがちなので、ワークやディスカッションを主体に。
6) テスト結果や研究態度を評価に入れる。


とにかく、研修部は参加者の集中力を維持できる環境づくりを徹底する。
それを出来ない限りは研修の意味をなさないというぐらいの意識じゃないといけないと思います。

新人研修もきちんと学んだ順に給与や報酬が出るようにするべきですし、研修の経済的価値を常に表示することが大事な気がします。また、自社の研修がすべてというような井の中の蛙的な社内研修はどんどん少なくすべきだと思います。

それから、今の研修の最大の問題は医師や薬剤師の現場ニーズを想定しての研修が出来ていないことだと感じています。いまだ、多くの企業が漫然と製品の差別化や応酬話法を練習している。

いまや、そんな話は現場で行われていないことは明白です。会えなくて四苦八苦しているMRにコミュニケーション出来る前提の話し方を伝えても、これって違うよなと思われているのがおちです。

また時々、ドクターを社内に呼んでロールプレイしてますが、医師もお金もらって来ている訳でその研修ではいつもの姿ではないケースが多く、意味をなさないという声も聞きます。

たぶん若手が一番知りたいのは、どうやって先生方のお役に立てる知識を身につけられるのか、声をかけたら、先生がきちんと時間を取ってくれる存在になりうることの方法でしょう。

そんなのは自分で経験の中から学んでいくものだと思われていますが、今の時点では上司や先輩に聞くとか、他社の親しい先輩に聞くぐらいしか方法がないから、そのレベルで止まっているというのが実状ではないでしょうか。

先日のMR-1コンテストでも多くの若手MRに声をかけましたが、「自分の実力があるかどうかが会社内だけの評価だと分からないので正直怖い。だから、MR-1のような公平な場に出て、実は自分の実力があまりないというのが露呈するのは恥ずかしいこと。」という言葉に表れているような気がします。

しかしながら、先日の第一三共のM&Aの話のようにいつ会社が吸収合併し、ある日突然、違う会社になることもありうる時代です。

皆さんの研修や自己啓発の仕方もそろそろ変えるべき時が来たのではないでしょうか。
外に目を向け、様々な視点から見れる自分づくりを目指してみませんか?
どんな会社に変化しようともゆるぎない自分にするために。

これも一つの自己啓発ソリューションです。
9月は「医療機関のM&A」について解説をして頂きました。

MRのための自己啓発サイト~アリストテレス
http://aristoteles-med.com/

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    • なおちゃん
    • 2017年 10月 01日

    今 人材派遣会社で顧問をしています。 会社は新規事業として医療 介護への参入を進めています。
    そこに私のような 医療知識 経験 人脈を欲したのだと思います。
    そこで感じたこと・・・ 
    1.新規事業に対し考える範囲が狭く 本質的なことではなく 各論において“ちょっと変わったアプローチ” ばかりを経営者は考えている
    2.新規事業参入としても あまりにも知識が無さすぎる。これはコンサルティング社会の弊害と考えます。

    そして 人材派遣会社の考え方として・・・
    1.医療は世紀末、介護はむやみやたら という認識 
    2.MRは不必要、いずれなくなる職種のため今のうちに稼いで さっと市場から逃げる という構図。

    研修は現状とFitしないと意味がありません。 医療の分からない人に顧客ニーズは分かるはずない。医師及びメディカルスタッフ、患者、そして地域。 それぞれはそれぞれの立場で 様々な影響の輪の中におり、家庭という社会にもいる。
    MRは 製品本位である限り 将来的にITに屈し 不必要になるでしょう。
    研修室に閉じこもった研修から得られるものはありません。 それはファーストステージです。
    私の前社(スイス 大手製薬会社)でも全く進んでいません。
    今 セカンド サードステージにいる医薬品業界は その在り方から帰るべきです。
    必要な知識とは? 必要な能力とは? 必要な意思とは? もう一度考え直すべきでは???
    コンサルティングのように各論に頭を使うだけではなく 本質論を共有しましょう!

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